クランプの仕組み STRUCTURE

クランプの原理PRINCIPLE

初期荷重(クランプ本体重量とロック装置等のスプリング強度)によってカムと旋回アゴでつり荷をつかみ、初期摩擦力を起こしてつり上げまたは引き起こし等を始めます。
荷重が増えるに従い、リンク機構による倍力作用とカム機構による自動締め付け作用によって締め付け力が増加、カムがつり荷に食い込んだ状態になります。
反転作業時に一時的に無負荷状態になってもロック装置がスプリングの力でカムを押し付けます。

クランプの原理

主な構造・特徴STRUCTURE / FEATURES

クランプの構造

  • クランプはつり荷の自重を利用して、特殊鋼に適切な熱処理を施したカム(歯板)と旋回アゴ(ジョー)をつり荷に食い込ませてつり上げる構造となっています。
  • 板厚の変化やつり角度の変化でグリップ力が大きく変動しないように設計されたカム及びリンク形状を採用しています。
    (※最大使用板厚1/4以下の鋼板、最大使用荷重の1/5以下の品物をクランプする際は要注意)
  • ロック装置またはロックスプリングを装備(VA型等一部は除く)。
    ロック作動中は、反転・着床時の一時的な無負荷状態でもクランプが外れにくく、脱落を軽減できます。

クランプを使い続けて起こる現象
(代表例)

  • カム(歯板)の摩耗、欠け
  • 旋回アゴ(ジョー)の摩耗、欠け
  • スプリング強度の低下、傷み、変形
  • ピン、ピン穴、ピン溝の摩耗
  • リンクの変形
  • 本体の疲労、当り傷、摩滅、変形
  • つり環の変形
  • ねじ・ねじ穴の摩耗
  • オーバーロードによる部品の変形・破損
  • 油切れによる作動不良とクランプ力の低下

特に、カム(歯板)・旋回アゴ(ジョー)は使用開始時より摩耗が始まります。また、使用限度以上に摩耗したカム(歯板)・旋回アゴ(ジョー)を使用した場合、つり上げ物の表面状態等によって摩擦係数が低下し、つり荷の滑落等が起こることがあります。
正常にご使用いただくためには常に点検を行い、整備を行うことが必要です。

お客様によるクランプの管理・点検

ロック装置について

イーグルクランプのロック装置はラッチ式とレバー式を採用しています。

ラッチ式ロック装置(スプリング式締め付け機構)

ロック装置用ラッチを本体内に押し込むと、スプリングの張力が作用し、締付用カムが開口部に飛び出し、つり荷を押し付ける機構です。通常使用しないときには、スプリングが効かない構造なので、締付用カムの開閉は自由で、その動きはつり環と連動します。ただし、正規の使用においてスプリングが効いている状態では、締付用カムは開きません。

レバー式ロック装置(締め付け↔開放機構)

[締め付け機構]

ロック装置用レバーをロック位置にセットすると、スプリングの張力が作用し、締付用カムがつり荷を押し付ける機構です。瞬間的につり荷重がなくなっても、ロック装置による締め付けが機能している状態では、締付用カムは開放にはなりません。

[開放機構]

クランプを取り外すときは、レバーを開放位置にしておけば、つり環を引っ張っても締付用カムは閉じません。

クランプの種類TYPE OF CLAMP

縦つり用クランプ

歯切りをしたカムと丸い旋回アゴでつり荷をつかむ構造です。ロック装置はスプリングによってカムを押し付けます。締め付け力はつり荷重に比例します。

  • ※つり環にかかる力(F)はリンクによってカムに加わる。カムにかかった力(f)はカムピンを支点とする締め付け力(f)でつり荷を締め付ける。

縦つり作動状態

横つり用クランプ

歯切りをしたカムと丸い旋回アゴでつり荷をつかむ構造です。ロック装置はスプリングによってカムを押し付けます。締め付け力はつり荷重に比例します。

  • ※つり環にかかる力(F)はリンクを介してカムに加わり、カムピンを支点とする締め付け力(f)でつり荷を締め付ける。

横つり(G型)作動状態

ねじ式クランプ

つり荷の重量がかかると球面アゴが傾斜し、つり荷にくい込むことでつかむ構造なので、どの方向にでもつり上げが可能です。

  • ※図のようなつり方、または引張り方の場合、球面アゴは初期荷重による摩擦力と、つり荷重(W)によって傾き、クランプ力(P)を発生させます。その大きさは、つり荷重の約2~3倍となります。
ねじ式作動状態(取り付け)
ねじ式作動状態(つり上げ)
ねじ式クランプの取り付け
ねじ式クランプの種類

水平つり用クランプ

従来、水平運搬に使用されたハッカーの、傾きや上下の衝撃による不安定さを解消した、上から押さえる構造です。押さえる力はつり荷重に比例します。

  • ※つり穴にかかる力(F)は直接カムに加わり、カムピンを支点とする締め付け力(f)でつり荷を締め付ける。

無傷クランプ

つり荷に傷をつけないため、平板な押さえ金と受け金でつり荷をつかむ構造。万一の場合、ストッパーカムが作動する機構を備えています。
締め付け力はつり荷重の5倍以上。

  • ※つり荷の板厚に合わせてクサビで開口調整し、つり環にかかった荷重がLリンク及び締め付けアームによって締め付け力(f)を発生する。
NEC型作動状態
NEC型作動状態(すべり)
無傷クランプ
(NEC型・NE型・BMB型)

クランプ選定のポイントPOINTS FOR CLAMP SELECTION

クランプは、その用途及び構造によって「縦つり」、「横つり」、「水平つり」(以上カム式クランプ)、「ねじ式」、「専用」に区別され、
縦つり・横つりの中には、それぞれ「無傷クランプ」があります。なお「専用」は特定のつり荷や作業に使用するクランプを指します。

1. 機種及び型式の選定

作業用途や鋼板、または形鋼等つり上げる品物に合わせて機種(例…縦つり用)や、型式(例…E型)を選びます。

2. 使用荷重・有効板厚の選定

つり荷の重量や何点つりするかによって「使用荷重」を選び、つり荷の板厚や取付部位の幅によって「有効板厚」を選びます。

  • ※クランプの各機構やその原理は、あくまでも鋼材用クランプの正規使用において該当するものです。なおご使用前には、必ず各製品の取扱説明書をよくお確かめください。(コンクリート製品用クランプに関しては専用カタログまたは取扱説明書をご参照ください。)